WALL

アクリル・キャンバス
120 × 120 cm

《WALL》は、
深夜、街を歩いているときに目にした
建物の壁の表情から生まれた作品です。

月明かりに照らされ、
水染みや風化した壁面、
そこに刻まれた時間の痕跡が、
静かに、しかし鮮明に浮かび上がっていました。

制作の過程では、
キャンバスを90度回転させながら描いています。
赤は、夜の街を歩く「私自身」の存在を、
黄色は、空に浮かぶ「月」を象徴しています。
そして画面の中には、
意識的に“地面のライン”も忍ばせました。
それが感じ取れるかどうかは、
見る人の感覚に委ねられています。

抽象画として完成させる最終段階では、
キャンバスを半時計回りに90度回転させ、
バランスを確認しました。
向きが変わっても成立する——
その瞬間に、この絵は確かな強度を持ったと感じています。

それこそが、
抽象絵画の持つ自由で豊かな美しさだと思っています。
屋外で風雨にさらされ、
時間を重ねてきた壁の質感を、
そのまま室内へと連れ込むような感覚。

《WALL》は、
空間に静かな空気と奥行きをもたらし、
そこに流れる時間までも
そっと飾るための絵です。